初めての、エッセイ。
2021.04.09
それは突然の出来事でした。
講談社の担当の方から連絡があり、エッセイを書いてみませんかと。
『群像』という文芸誌。
恥ずかしながら存じ上げなかったので、慌てて本屋さんに走り、手にとりました。
第一印象は、分厚い!字が小さい!有名な作家さんが寄稿されていて、どれも高尚で巧妙な作品。玄人の読み物といった感じ。
・・・・・果たしてこんな私にに務まるのかどうか・・不安な気持ちをそのままぶつけてみましたら、「ののがたりで書かれているような筆致も大歓迎です」と。
ののがたりを読んでくださっていたのだと知ってとても嬉しく、そのお言葉のおかげですっかり意気込み、ねじり鉢巻をした気分になって筆をとりました。
500文字のエッセイ。原稿用紙1枚と少し。
それなら私にも書けるかもしれないと、書き始めてみたものの・・あれれ?逆に、規定の文字数に収まらない。
「ののがたり」で自由気ままに書いていた文章とはわけが違うんだ!と今更気づき、来る日も来る日も頭を抱えて悩み続けて、やっとの思いで完成しました。
心臓が飛び出しそうになりながら、書いた文章を担当の方にお送りする瞬間、手が震えました。
ありがたいことに、ほっと安心するお返事をいただき、赤ペンで段落のあたまを改行してくださったり、ところどころ日本語を直してくださったり・・・あぁ、これはドラマで見たことのある作家さんと編集者さんのやりとりではないか・・と夢見心地になりながら、新しい扉が開かれたような気分になりました。
そして、気づいたことがありました。
私は、文章を書きたかったのか!・・・・と。
テーマは『想い出の駅』
ミステリーハンターで旅した国の想い出の駅や、海外に自分で旅した時の駅、色々頭をよぎりました。しかし最終的に、自分の生まれ育った故郷の最寄駅で、幼稚園時代から高校時代まで13年間、通い続けた「石清水八幡宮駅」での思い出を書くことにしました。
初めてエッセイを書いたんだよと、友人や知人に話したら、「え!?『群像』に!?!?きゃー!!」と叫ぶ人も。
その中でも一番ビックリ驚いていたのは母でした。
「すごすぎる!なんで?!もう作家さんやん!!!!」とメールが。
「もうめっちゃ推しの作家さんとかが書いてるし、単行本になる前にそこに出したのが芥川賞とかもらってるんだよ! 今月号のも買って読んでるし!」(原文まま)
と、あきらかに大興奮。
引っ越しをして本の断捨離をしたけど、これだけは残しておきたいと思って大事にとってあるの!と、2016年10月号の「群像」の写真まで送ってきてくれました。
母が大学を卒業して農家のお嫁さんになるまでに唯一働いたことがあるのは、図書館のアルバイトなのだそうです。本が大好きな母にとっては、とても嬉しい出来事のようでした。(本好きが遺伝しなかったのが悲しい事実。。)
ふとした時に「また舞台に立つ姿が見たいなぁ」と私に向かってポツリと言う母。今回のことでこんなに喜んでくれるとは思ってもみませんでした。
分厚い本の、錚々たる方々の文章の中で、私の文章はとてもつたないものだと思います。それでも幼いころの記憶を探り起こして、自分のすべてをえぐりだす気持ちで書いたエッセイは、紛れもない本当の記憶で、本当の想い出です。
ぜひ、今こうして「ののがたり」を読んでくださっているみなさんに、読んでいただけますことを願っています。
そしてよろしければご感想もいただけると、とても嬉しいです。
久しぶりに、お手紙の宛先を記載しておきますね。
〒150-0021
東京都渋谷区恵比寿西2-19-9 フランセスビル1階 野々すみ花事務局
野々すみ花 宛
群像5月号。どうぞご覧くださいませ。
sumika