絵本の新たな世界。
2022.12.09
久しぶりの「ののがたり」です。
みなさんいかがお過ごしでしょうか?
随分ご無沙汰してしまいました。
私は、寒さに負けずとても元気に過ごしています。
ののがたりから離れてしまう期間が長くなるにつれ、頑張って綺麗な文章を書かなくてはと勝手に自分でハードルを上げてしまって、下書きした記事はいくつかあるものの、自信がなくてお蔵入り・・・ということが続いてしまいました。
どうしてそんなにカッコつけようとするのでしょうね!?(笑)
その時に感じたことを、その時の熱をもったまま届けたいので、今日は体裁を気にせず、勇気を出して書いてみます。
用事があって息子と出かけた御茶ノ水・神保町エリア。
そういえば!たまたまテレビで特集されているのを見かけていつか息子と行ってみたかった本屋さんのことを思い出し、その勢いで立ち寄ってみました。
古書店街というのでしょうか。進んでも進んでも古書店がひしめき合っています。年月の経った紙の独特の匂いが心地よく、昔の演劇のパンフレットを見かけて手に取りたくなったけど、今日は息子も一緒なので目的の場所へ直行。
「BOOK HOUSE」(ブックハウス)という児童書専門店が厳かに、でも温かい雰囲気で佇んでいました。
天井が高く、少し非日常な空間に新鮮さを感じましたが、子どもたちの目にはどう映っているのでしょう。
中央には、カフェが併設してあり、疲れたら座って一息つけると思っただけで心が休まりました。
絵本はいつも色々なお店で買います。
同じ本が置いてあっても、あるお店では一際輝いて目立っていて、あるお店では置いてあることにも気づかない・・・そんなことがあります。私の体調や気分が関係しているのでしょうか。それともお店屋さんの配置方法やその本へのエネルギーのかけ方などが関係しているのでしょうか??わからないのですが、なんでこんなに違うのだろうと、いつも不思議に思います。
このBOOK HOUSEでは、見たことのある本が別の輝きをしていたり、なんだかとても新鮮に感じました。思わず手に取ってしまう新しい絵本も沢山発見しました。
奥にはなんと無料で観覧することができる展示ルームがあり「かさいまり絵本原画展」がちょうど初日ということでした。恥ずかしながら、かさいまりさんの絵本を読んだことがなかったので、こそこそっと見させてもらうことに。展示ルームの入り口には、これまでこの世に生み出してこられた何十冊もの絵本の表紙が並んでいて、絵本の世界って広いんだなぁと、ポーーーーーっと眺めているところに、なんと・・・・ご本人登場!!
不意打ちな初対面に完全に挙動不審になり、ご挨拶もままならない感じでコソコソ逃げ帰ろうとしたら
「あなた、ここに絵を描いてみてよ!」と。
「・・えぇ??」
「この絵の中に、自分の住みたい家を描くのよ」と。
新刊の『すてきないちにち』という絵本にちなんで、“かやねずみの国”のお城やエバちゃんというネズミの家、洋服屋さんや劇場が壁面に描かれており、その余白の部分に、訪れた人が好きなように絵を描いて良いということでした。
そんな大それたことできるはずがありません・・。
思わず、「と、とにかく息子を呼んできます!!」と、遠くでアンパンマン列車の音の出る絵本に夢中になっている息子を抱えてダッシュで戻りました。
「あら、ぼくちゃん。じゃぁ私がぼくちゃんに絵本を読んでおくから、その間に描いてよ♡」と驚きの提案を持ちかける、かさいまりさん。
「そんな贅沢なこと・・ありえません・・いやいや・・・」と口籠もっている間に、かさいまりさんは息子に読み聞かせを始めました。(なにもかもはやいっ!!)
もう口をはさむ隙すらなく、息子も真剣に聞き入っている様子。
作者ご本人が、息子一人のために時間を使って絵本を読んでくださるなんて、そんなことあり!?!?これは夢か!?!?!?と思いつつも、こうなったからには絵を描かせていただくしかありません。
少しのあいだどこに何を描こうか迷いましたが、私は劇場の横に家を構え、劇場で歌や踊りを披露するねずみさんたちのコンディションを整えるためのトレーニングルームを作ることにしました。
それが、こちらです・・・・。
写真右下にある「すみかのいえ」
そう。ちゃんと自分の名前も添えることがルールのようで、ちゃっかり「すみか」と書いてしまいました。
部屋の中にはグランドピアノと姿見。一人で集中できる場所です。
絵を描き終わったころに、ちょうど読み聞かせの絵本も最後のページに。
途中、出版社の方か編集者らしき関係者の方々が数名訪れるも、あまりにも集中して絵本を読んでもらっている息子の姿を見て、じゃあまたあとでね!と去っていかれる姿に、母の私は汗ダラダラ。
最後には絵本に息子の名前入りのサインまでしていただき、まさかのまさかが続いた、夢のような時間でした。
とても不思議でした。
今まで、絵本には絵本の世界が広がっているばかりで、それをこの世に生み出した人がいることを、あまり実感として持っていませんでした。
いつも息子に絵本の読み聞かせをする時は、表紙のタイトルを読み上げたあとに、「○○○○○○○○さく・え」などと言って、必ず作った人の名前も読み上げていました。誰が文章を書いたのか、誰が絵を書いたのか。それを無視してはいけないと思っていたからです。自分なりの作者さんへのリスペクトがあったはずなのに、いざ突然作者さんにお会いして、びっくりして挙動不審になる私と、目の前の人が「かさいまりさん」だとわかっていない息子とのアンバランスな親子の様子は、鮮烈な記憶として、これから先忘れることのない出来事だと思います。
どう言葉にして良いのかわからないのですが、絵本の世界の「新たな扉」が開いたような気がしてなりません。
かさいまりさんの絵本は、絵がときめくように美しいのはもちろんのこと、登場人物がすぐ近くに存在するような、不思議な力をもった素敵な絵本でした。
素晴らしい時間を、ののがたりに刻むことができて嬉しいです。
すみ花