Nonogatari

芸人さん

2015.04.20

又吉直樹さんの『火花』という本。
現在は単行本化され、どの本屋さんでも目につく場所に置かれてあります。
「文學界」という文芸誌に掲載された時は、あまりの人気で在庫もなく、私はいくつもの本屋さんを駆けずり回って必死になって探しました。結局、発売から何週間かしてネットで手に入れたのですが・・。そこまで一冊の本に執着したのは生まれて初めてでした。私にとって又吉さんは、妙にくせになってしまう、おかしな存在なのです。
私は案の定、『火花』に大きな影響を受けました。
突然、芸人さんに触れてみたい衝動にかられ、夕方のバレエのレッスンのあと、大きなリュックを背負って髪をひっつめたまま駆け足で新宿のルミネtheよしもとへ。おそるおそる、生まれて初めてのお笑いライブに参入しました。まず自由席だということにビックリしたし、劇場入り口でオロナミンCをもらえることにもビックリしたし、私の予想では今時の若者が流行りの装いでワイワイと集まる場所なのかと思って、自分の場違いな出立ちに不安を感じていたのだけれど、とんだ思い違いで、老若男女、幅広い世代いろんなスタイルの人たちがいて、一人で来ている女性も沢山でした。良い意味でとてもラフで解放的な空間でした。
ただ、だからこそとてもシビアな世界なのかもしれませんね。
馬鹿高いチケット代でもないし、オペラグラスもなくていいし、まばたきするのも惜しいような現実から離れた夢の空間でもなく、ほんとうに、日常がそこにあるのです。舞台だからといってなにかの魔法がかかるわけではないのです。だからお客さんの反応はとても素直でした。ウケるかウケないか。その線引きは、どれだけこちらに飛び込んで来るか。なのかもしれないと思いました。たとえネタが面白くなくても、その場にいることを身体いっぱいに感じて、本気で楽しませようとしてくれる、その真心に、つい心がほころび笑顔になってしまう。漫才というのはとても素敵な芸ですね。人の心をつかむのがお仕事なのですものね。
シビアな世界で戦っている芸人さん達の姿を拝見して、背筋が伸び、身が引き締まる想いでした。

すみ花