Nonogatari

豚の忘れ物。

2016.02.01

 

忘れて来たんです。

豚を。

 

あ、いつも「豚さん」と呼んでいる

豚皮のリュックを。

とても大きくて、皮の加工をしていないので、

遠くから見るとまさに豚一頭背負っているのですが

そんな大きなものなのに、

気がついたら

背負っていませんでした。

 

日本舞踊のお稽古の帰り道、

荷物でパンパンの豚さんを背負ってデパートで買い物をして

電車を二本乗り継いで最寄りの駅に降り立ったわけですが

なんだか、なんだか身体が軽くて

いい気分だなぁなんて思っていました。

でも、ふと後ろを振り返って

気づいたんです。

 

あ、ない。・・・ってね。

こういう時って、

なぜだかわからないけれど

笑いがこみあげてくるのね。

でも、そんな場合じゃないって

必死に顔をととのえて

駅員さんに説明しました。

豚のようなリュックを忘れて来ました!と。

「君はバカか?」というような顔を露骨にあらわしながらも

ご親切にしてくださって、

沢山の駅員さんが電車のすみずみまで探してくださいました。

なのに、見つからないんです。

 

もうここで笑顔なんて完全に消えまして

次は乗り換える前の電車に連絡をとって

またまた沢山の駅員さんが探してくださいました。

なのに、なのに見つからないんです。

ホームにもない、電車にもない。

あぁ、これが神隠しか!!とかブツブツ言いながら

 

帰宅したわけです。

落ち込んでいるわけです。

その一部始終を妹に話したら、

「はい、お姉ちゃん今すぐデパートに電話しなさい」と。

え・・・?

あ・・・

おぉ!そうだ!その手があったか!

 

「あのぅ、忘れ物をしたかもしれなくてですね、

豚みたいなかたちをし・・・」

「えぇ、リュックですね。お預かりしておりますよ」

と、その人の声は笑っていたのであります。

 

さいわい、そのリュックには

マル秘書類も大金も

プライバシーとかそういうものも

なにひとつ入っていなくて

ただ汗だくの浴衣やら着替えやらが

風呂敷に包まれておりました。

うひひ、と見つけて

もし持って帰った人がいたとしても

ただの迷惑なモノで済んだわけです。

 

胸をなでおろしました。

 

 

いやいや、なでおろしてなんかいられない。

次は何を忘れるか!

本当に気をつけていないと。

 

空想に夢中になっていると、あぶないです。

 

みなさんもどうぞお気をつけて。

 

 

sumika